メリット:
・デメリットがあるがゆえに参加者が少なく、落札可能性が高い
・競売物件よりも値段設定が甘い
デメリット:
・所有権を得た後に事件の来歴(関係者がいつ何をしたのか)を閲覧できない
・物件の詳細が写真も含めてほとんどない
競売と似たものに公売があります。
・競売:債務者(借金をしている人)が債権者(借金を貸している銀行など)に対して、借金を返せなくなった時などに、裁判所に競売申し立てを行うことで、裁判所が民事執行法に基づいて該当の物件を競り売りにかけるもの。
・公売:税金の支払いができなくなった際に、自治体が差し押さえた税金滞納者の資産を競り売りにかけるもの。また、国有財産も引き払われて公売に掛けられる。
競売は主に土地や建物などの不動産を扱っていますが、
公売の場合は資産全般ですので、不動産以外にもカメラや車といった動産も競りの対象になります。
有名な公売取り扱いサイトとして、Yahoo!の官公庁オークションがありました。
車などを安く手に入れる手段の一つとして有名ですね。
今ではKSIオークションに取って代わられています。
さて、この公売にかけられた資産のうち、不動産が公売不動産になります。
動産と違い不動産は動産とはまた違った特徴を持ちます。
・「登記」という所有者を法的に明らかにする必要がある
・不動産は動かせない(当然ですね)ので、元持ち主から持っていくのではなく、元持ち主を動かす必要がある

このうち、1つ目の登記は公売の主催者である自治体が責任をもって行ってくれます
(司法書士への報酬や仲介手数料も不要)。
問題は2つ目です。
ここが公売物件の大きなデメリットとなります。
公売物件の注意書きとして必ず書かれているのが以下の文言です。
「執行機関(国)は、公売財産の引渡しの義務を負わないため、使用者又は占有者に対して明渡しを求める場合や不動産内にある動産の処理などはすべて買受人の責任において行うことになります」
ここが競売との最大の違いです。
競売の場合は引渡し手続きまで裁判所に依頼すれば、
執行官とともに物件の引渡しを法的に行うことができます。
しかし、公売の場合はこの裁判所の引渡し命令を取ることができません。
そうなると、裁判を申し立てて五分五部の状態から元所有者と対峙しなければいけません。
引渡しであれば低費用(7万円~)・短期間で物件が明け渡されるのですが、
裁判となると弁護士費用やその手間などは膨大になると予想されます。
したがって、買い受けを希望する人にとっては最高価格で入札できた後の明渡し交渉が最大の核心となります。
法的な所有権はこちらにあるとはいえ、ほぼ自力で元所有者と決着をつける必要があるので、競売よりも数段ハードルが高いです。
そのため、考えうる対策としては
・入札前に物件所有者や近隣住民に話を聞き、交渉の余地を探る
・所有者が占有していない空き家状態の物件を狙う
といったことが考えられます。
健全なのは前者ですが、所有者の気性も知れないまま対面しないといけないうえ、落札後に所有者が態度を急変させるなどのリスクも考えられます。
一方で後者は、元所有者とやり合う必要がないのは気が楽ですが、問題は物件内の動産の処理です。
公売で所有権を得たのはあくまで物件のみであり、物件内の動産については元所有者が法的な所有権を有しています。
そのため、無断で動産を処分した際に、元所有者から異議申立てをされるとこちらに非があることになります(他人の物を勝手に処分したことになるので)。
とはいえ、税金を払えない程の人が金銭的価値あるものを建物内に残して出て行ったり、裁判という手間暇かけてこちらに追求する余裕があるかどうかを考えると、そのリスクは決して高くはないと私は考えます。
もちろん虚偽の追求、例えば
「家の中に隠し財産1000万円があったのに、勝手に盗まれた!」
などと主張されれば、こちらにはなかったことを証明することもできません。
(物の有無の証明のために、競売では執行官という中立な人が現場の目録を作ります)
ここら辺の対応や方針は人によりけりですので、自分のリスク許容度から自分の頭で判断する必要があります。
私の考えとしては、取得した不動産の使用(賃貸・売却・居住)を裁判により長期間できない場合のコストの方が、仮に訴えられて敗訴や調停した場合の動産分の損害賠償の方が小さいであろうと見込んで、元所有者に連絡がつかない場合にはさっさと動産を処分する方針です。
また、競売との違いとして以下の2点が挙げられます。
・所有権を得た後に事件の来歴(関係者がいつ何をしたのか)を閲覧できない
・物件の詳細が写真も含めてほとんどない
1点目、競売では債務者の情報も債権者の情報や書類送付先などを閲覧できますが、公売物件では登記簿謄本や住民票くらいしか閲覧できず、元所有者の足跡をたどるヒントが非常に限定的なのです。
連絡がとれさえすれば、手紙で鍵の引渡し要求や動産の所有権について相談できるのですが、
連絡がつかないことが一番悩ましいです。
2点目、競売では不動産鑑定士が物件について詳細(間取り・瑕疵・材質・評価額など)を記してくれています。
公売の場合は公図や建築年月日、外観の写真くらいしか資料がありません。
そのため、物件の詳細については自分で現地に行くか、数少ない資料から予想するしかありません。
つまり、予想できない物件の瑕疵のリスクが尋常じゃないのです。
そのため入札の際には十分すぎるほどのリフォーム費用を見越した額で入札する必要があります。
・公売のメリット
ここまで公売の怖さ・デメリットを挙げてきましたが、ここでようやく競売と比べたメリットです。
・デメリットがあるがゆえに参加者が少なく、落札可能性が高い
・競売物件よりも値段設定が甘い
1点目、昨今の競売市場は高騰しているといわれている(いつも言われていますが)通り、
競争が激しいため、めぼしい物件には10-20件の入札があります。
一方で、公売の場合には物件数は少ないものの、公売で物件を狙う人自体の少なさもあり、入札なしの物件も多くみられます。
そのため、上述したリスクを飲み込める場合であれば公売で物件取得は十分妥当な選択肢といえます。
2点目、公売の場合はお役所の担当者が物件の調査をしていると考えられます。
そのため、現況と市場性を吟味して値付けしているというよりは、
登記簿上の数字や面積のみで価格設定をしているのではないかと思われる設定価格が見受けられます。
つまり、築年数が古くてもリフォーム済みであったりして実勢価格が高くなると考えられる物件でも、非常に安価なっている場合があります。
そのため、こうしたギャップを孕む物件を落札できた際は、大きな利益を得られる可能性もあります。
まとめると、公売は競売よりも情報がクローズドで、リスクも大きいが掘り出し物も多く、かつ競合が少ない、というハイリスクハイリターンな方法といえるでしょう。
とはいえ、ハイリスクの部分は事前の努力である程度絞り込めるため、
私は十分に狙う価値があると思います。
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